この記事は、あくまで「構図・レイアウトなどからデザイナーに任せたい」という場合の記事です。この通りのデータを作る必要は全くありません。
同人誌の表紙イラストをデザイナーへ渡す場合、完成した絵が綺麗であれば、それだけで表紙デザインが作りやすいとは限りません。
同じイラストでも、周囲まで描かれているか、人物と背景を動かせるか、タイトルを置く余地があるかによって、デザインできるレイアウトの幅はかなり変わります。
もちろん、表紙のために絵柄を変えたり、無理に描き方を合わせたりする必要はありません。少し余裕を持ったデータにしておくだけでも、デザイナー側でできることが増えます。
表紙イラストは「完成した一枚絵」と違う
SNSへ投稿する一枚絵なら、画面内で完成していることが大切です。一方、表紙ではその上に、タイトル、作者名、サークル名、装飾などが追加されます。
さらに、デザインによっては人物を左右へ移動したり、一部を大きくトリミングしたり、文字を人物の後ろへ入れたりします。
そのため、表紙用イラストでは「この状態で完成」ではなく「ここからデザインできる余地がある」データの方が扱いやすくなります。
人物と背景は分けておく

表紙デザイン用のPSDを渡す場合、人物と背景を別レイヤーにしておくとレイアウトの自由度が上がります。
人物を少し右へ移動して左側へタイトルを置いたり、人物だけ少し大きくしたりできるためです。
背景と人物が完全に結合されている場合でもデザインはできますが、基本的には「完成した画像の上へ文字を配置する」方向になりやすくなります。
小物も別レイヤーにすると使いやすい
花びら、光、紙吹雪、植物など、人物とは独立して動かせる小物がある場合は、別にしておくと便利です。
たとえば花びらをタイトルの手前に数枚だけ重ねれば、文字とイラストに奥行きを作れます。
ただし、細かく分ければ分けるほど良いわけではありません。
レイヤーは分けすぎなくていい

イラスト制作時には、線画、下塗り、影、ハイライト、加工、色調補正……と大量のレイヤーを使うことがあります。
その制作状態をそのままデザイナーへ渡す必要はありません。たとえば人物なら、人物として一緒に動かしたいものをひとまとまりにして大丈夫です。

人物/背景/前景の小物 くらいの単位で扱える状態がかなり使いやすいです。
服の影だけ別、髪のハイライトだけ別、といったレイヤーまで残っていると、デザイン時に人物を移動した際、一部だけ取り残す原因にもなります。
イラストは仕上がりサイズぎりぎりに描かない

表紙全面へイラストを使用する場合、仕上がりサイズぴったりではなく、印刷所が指定する塗り足しまで含めて描画します。
たとえば塗り足しが天地左右3mmなら、その部分まで背景やイラストが必要です。
ただ、デザインの自由度を考えるなら、最低限の塗り足しだけではなく、さらに少し外側まで描いてある方が扱いやすくなります。
理由はトリミングです。人物を少し右へ移動したいとき、左側に背景が残っていなければ移動できません。
「A5本だからA5で描く」より、最終的な画素数を見る
イラストデータでは、A4・A3といった紙サイズだけで判断するより、実際の印刷サイズと解像度を確認する方が重要です。
必要な解像度やカラーモードは印刷所によって異なるため、利用予定の印刷所のテンプレート・入稿ガイドを基準にしてください。
特に、完成後に人物を大きく配置する可能性があるなら、拡大しても必要な解像度を保てるサイズで描いておくと安心です。
逆に、キャンバスだけ巨大でも、人物自体が小さく描かれていれば拡大できる範囲は限られます。
大切なのは、使いたいサイズまで人物を拡大したときに十分な情報量が残ることです。
顔や髪をキャンバスの端で切らない

表紙用として特に使いやすいのは、人物の周囲に少し余裕があるイラストです。
たとえば頭頂部が最初からキャンバス端で切れている場合、デザイン側で人物を縮小すると、その部分だけ不自然に切れたままになります。
肩、髪、衣装、小物なども同様です。実際の表紙では最終的に切って使うとしても、元データでは少し外側まで描いてある方がトリミングの選択肢を増やせます。
引きの構図があるとトリミングの選択肢が増える
表紙では、同じ人物イラストでも、
- 顔を大きく見せる
- 上半身まで見せる
- 人物を小さく置いて余白を取る
など、さまざまな使い方ができます。
元データが顔のアップだけなら、そこから引いた構図を作ることはできません。
反対に、ある程度広い範囲まで描いてあれば、デザイン側でアップにも引きにもできます。

個人的には、表紙イラストを依頼する段階で構図を完全に固定していないなら、少し広めに描いてもらえるだけでもデザイン案を作りやすくなります。
タイトルを置く場所を空けておく必要はない
「表紙だから上半分を全部空白にしなければいけない」というわけではありません。
人物の上にタイトルを重ねるデザインもありますし、顔の横へ小さく配置することもあります。
ただ、画面全体に髪・手・小物・エフェクトなどの細かな情報が密集していると、文字を読ませる場所が限られます。
そのため、構図を考えるときに、どこか一箇所だけ情報量の低い場所を作る くらいを意識すると使いやすくなります。
キャラクターの顔付近は特に余裕があると使いやすい
表紙ではキャラクターの顔が主役になることが多いため、その周辺へ大量の文字や装飾を置かないケースも多いです。
人物の顔のすぐ横まで大きな小物やエフェクトが入っていると、デザイン側でもそこを避けながらレイアウトする必要があります。
小物を別レイヤーにしておけば、必要に応じて位置を調整できます。
「この花は絶対ここに置きたい」という意図があるなら、そのままで構いません。動かしてよいものと、構図として固定したいものを伝えてもらえると判断しやすくなります。

花びらは動かさないでください

人物同士の位置は固定でお願いします
背景なしの人物イラストを渡す場合
人物のみの透過イラストでも表紙は作れます。むしろ背景をデザイン側で作る予定なら、透過された人物データはとても扱いやすいです。
この場合も、髪や服の端がキャンバスで切れていないか確認します。
また、人物の周囲に白い縁や不要な半透明ピクセルが残っていない状態だと、そのまま配置しやすくなります。
PSD以外でも依頼できる?
これはデザイナーによります。
背景と人物を動かす必要がないなら、PNGやJPEGなど完成画像でも表紙デザインはできます。
ただし、
- 人物の後ろにタイトルを通したい
- 人物だけ位置を変えたい
- 前景の花だけ文字の上へ載せたい
といった加工を希望する場合は、レイヤーを保持したPSDなどの方が対応しやすくなります。
Inky Designへご依頼いただく場合も、完成イラストしかない場合はその状態から制作できます。レイヤー分けされたデータが必須という意味ではありません。
表紙イラストを渡す前のチェック
最後に確認したいポイントは、「デザイン側で動かす可能性がある部分に余裕があるか」です。
- 人物と背景が必要に応じて分かれているか
- 人物の周囲まで描かれているか
- 塗り足しが足りているか
- 印刷所が求めるサイズ・解像度を満たしているか
完璧に準備する必要はありません。すでに完成したイラストがあるなら、そのデータを前提にできる範囲でデザインすれば問題ありません。