デザイナーへのイメージの伝え方
デザイナーにデザインを注文するとき、一番悩むのは「どういう風にイメージを伝えたらいいか」なのではないかと思います。
実際にお仕事を受注していて、「どう伝えたらいいかわからない」と言われることが多々あります。頭の中にぼんやりとあるイメージを伝えるのは難しいですよね。
今回は「デザイナーにより的確にイメージを伝えるために押さえるべきポイント」を解説していきます。
発注の際のNGワードを知る
曖昧な言葉を使わない
- スタイリッシュな
- 洗練された
- いい感じの など
上記のワード、実はイメージが伝わりません。
何故かというと「スタイリッシュ」などの言葉の捉え方は人によって全く違うからです。
「スタイリッシュ」には「今風で洒落ている・流行に合っている」という意味があります。しかし「今風で洒落ている」にあてはまるデザインは非常に多く、「これこそがスタイリッシュなデザインだ」と決められた形式は存在していません。
スタイリッシュな感じにお願いします!(カラフルなグラデーションとか…)
スタイリッシュですね!(モノクロでシンプルにしてみようかな?)
依頼者がスタイリッシュだと思っているのが「カラフルなグラデーション」、デザイナーがスタイリッシュだと思っているのが「モノクロでシンプル」だった、なんてことも起こり得るのです。
「洗練された」や「いい感じの」なども曖昧です。依頼者の中にハッキリとした定義があったとしても、デザイナーも同じ認識かどうかはわからないのです。
いい感じにしてください!
この人は何を「いい感じ」だと思うんだろう?
感性によって左右される言葉に注意
犬を可愛いと思う人もいれば、怖いと思う人もいますよね。実は「可愛い」「かっこいい」なんかの言葉も人によって範囲が違います。
「少女漫画のようなハートや花のモチーフをあしらったキラキラしたデザイン」を想像して「可愛いデザイン」と言ったとしても、デザイナーが「オトナ女子に受けるようなシンプルでパステル調のデザイン」を「可愛いデザイン」として想像する可能性があります。
そのため「可愛い」「かっこいい」「綺麗」などの一見わかりやすそうな言葉を使うにしろ、依頼者自身が「どんなものを可愛いと思っているのか」を伝えなければデザイナーには伝わらないのです。
環境・経験から違ってしまう言葉にも注意
例えばこのようなケース、全く別のものが仕上がってしまいます。
海の色でお願いします!
海の色ですね。わかりました!
このように、相手がどう捉えるかわからない表現はなるべく避けましょう。
具体的に使って欲しい色がある場合は「WEB色見本」などで指定すると安心です。
イメージの参考を見せる
既存のデザインを添付する
デザイナーにイメージを伝えるのに一番有効な手段は、イメージに近い画像をデザイナーに見せることです。
「可愛いデザイン」を依頼するときは、「例えばこんなものを可愛いと思います」といくつか参考イメージを渡すと良いでしょう。文章で説明するよりも効果的に伝わります。
盗作にならない?
依頼者としては「そんなことをしたらそのデザインを真似されてしまうのではないか」「添付したデザインとそっくりなものを作られてしまうのではないか」と不安になるかもしれません。
しかし、そんなことはありません。デザイナーは添付されたイメージを、似たようなものを作るために使うのではなく、依頼者の感性を理解するために使います。
こういうデザインが可愛いと思います!
(この人の中の「可愛い」はガーリー系なんだな)
例えば「可愛いデザインを作って欲しいです、例えばこんなチラシの雰囲気です」とイメージ画像を渡されたら、デザイナーは「このチラシに似たものを作ろう」ではなく、「依頼者の中の”可愛い”はこういう傾向なんだな」と理解します。
上でも述べたように「スタイリッシュ」と伝えてもデザイナーが「依頼者がどんなものをスタイリッシュと言っているのかがわからない」状態ではイメージ通りのデザインにはなりません。
Pinterestなどで参考になりそうなデザインを探し、デザイナーに伝えましょう。
未確定事項を減らす
仕様はできるだけ伝える
例えば「シリアスな話ならシックで落ち着いたデザイン」「ほのぼのした話なら暖かくて柔らかいデザイン」など、話によってデザインの傾向は大きく違います。
他にも、「A4サイズならこんな大胆なデザインが似合う」「文庫サイズではこの演出は使えない」など、サイズによっても出来ること・出来ないことが違ってきます。背幅も、「薄ければこんなデザインが似合うけど、厚みがあるならこんなデザインもできる」ということがあります。
そのためデザイナーにも依頼の段階で可能な限り仕様を伝えることが大切です。
未確定事項が多いと曖昧なデザインに
「背幅は決まっていないのでどうなっても大丈夫なようにしてください」や「話のオチが決まっていないのでストーリーが少しブレるかもしれません」などといったご依頼もInky-Designでは対応可能です。
しかし「どちらになっても大丈夫な幅広く対応可能なデザイン」として考えるため、「このサイズ/厚みにピッタリのデザイン」や「まさにストーリーを表すデザイン」などの、的を射たデザインというのはどうしても難しくなってしまいます。
そのため「まさに」「ピッタリの」デザインをご希望の場合は、できるだけ未確定事項を減らした状態でご依頼いただけますと非常に助かります。
おまけ:伝えるのに注意が必要なイメージ
最後に、伝えるのに気をつけなければいけないイメージをご紹介します。
それは、「具体的な指示」です。
具体的な指示は「縛り」になる
依頼者が「明朝体を使ってほしい」と言ったら、デザイナーは明朝体を使います。
そういった指示をする前に、その指示が「なんとなくの希望」なのか「こだわり」なのかを考えるようにしましょう。
タイトルは手書き風のフォントにしてください!(シリアスな話だから、エモい感じにしてほしいな。なんとなくイメージに合いそうだし)
わかりました。手書きフォントですね。(他のイメージと合わせて考えると明朝体の方が合うんだけど、こだわりならそうした方がいいよね。)
上記の例では、依頼者は「なんとなくエモそうだから手書きフォントにしたい」と指示しています。
しかしデザイナーは、その「なんとなく」を「わざわざ指示があった=こだわり(絶対に守らないといけない)」として捉えてしまいます。
そのため、「なんとなくこれが合うと思ったから」で指示をするのをやめ、次のように指示することをオススメいたします。
シリアスな話なので、エモい感じにしたいです。この参考画像みたいなデザインがエモいと思っています。
透明感と冷たさのあるエモさがお好きなようですね。それでは小さな明朝体がピッタリだと思います!
Inky Designでは、具体的に「こうしたい」とご指示を頂いた場合、「こだわり」なのか「なんとなく」なのか確認させて頂く場合がございます。なんとなくのご指示だった場合には、もっと合うものをご提案させて頂くことがございます。
「条件」ありきのデザインになってしまう
ご依頼者様から「タイトルを手書き風にしてください」と言われた場合、デザイナーは「タイトルが手書き風であること」の縛りがある上でデザインを考案することになります。
こういうイメージでお願いします。あとタイトルは手書きで!
そういうイメージならこんなデザインがぴったり!でも、手書きタイトルが合わないからボツだなぁ…。
極端な話で例えると、「元気いっぱいでポップなデザインにしてください。寒色・明朝体でお願いします」「とてもシリアスで厳かな話の表紙です。ショッキングピンクとハートマークを使ってください」というような、指示とイメージが明らかに合わない場合もございます。
身近な例ですと「カッチリした真剣な話、タイトルは手書きフォント」「元気いっぱいなギャグ話、水彩風デザイン」など、微妙に合わせるのが難しいご指示もございます。
もちろんそれが「こだわり」であれば全力でサポートいたします!
「別にこだわってないけど、なんとなく合いそうだから言ってみた」というご指示でしたら、指示が無い方がより良いデザインになりやすいです。「できればこうしてほしい」というご指示はご遠慮なくお聞かせください。
イメージの伝えすぎにも注意
デザインに自信の無い方は、イメージの伝えすぎにご注意ください。
背景色はオレンジで、タイトルは明朝体で右上に入れて、白色の星を三つ中央に並べて……
全部決まってる…その通りにデータ化するだけでいいのかな?
もちろん明確にイメージがある場合はそれでも問題ありませんが、そうでない場合は注意が必要です。
これは言い換えると、プロの料理人にレシピを渡してその通りに作らせるような状態になります。
・青色を使ってシリアスなイメージでお願いします。
・ニンジンを使って甘い料理を作ってください。
・背景色はこれ、フォントはこれ、この模様をこの位置に……
・ニンジンは2本、みりん小さじ1杯、砂糖は30g……
もちろん明確なイメージが決まっている場合には、その通りにご指示をお願いいたします!
デザインのご提案ではなく、イメージのデータ化の方向で対応させていただきます。
まとめ
以上が「デザインをより的確に伝えるために押さえておくべきポイント」です。
もちろん「丸投げさせてほしい!」といったご依頼も喜んでお引き受けいたしますが、もし「こんな感じのイメージがいい」というものがありましたら、是非ポイントを押さえてしっかりとお伝えいただけると幸いです。