小説同人誌を印刷所へ入稿するには、書き上げた文章を本のサイズに合わせて組版し、PDFなど印刷所が受け付ける形式へ書き出す必要があります。

Wordで細かく作り込むほか、Nolaや縦式からPDFを書き出したり、文章を貼り付けるだけのブラウザツールを使ったりと、選択肢は増えています。

「とにかく簡単に作りたい」「スマホだけで完成させたい」「市販の文庫本のように細部まで整えたい」では、それぞれ最適なツールが違います。 まずは、自分に合う作り方から選びましょう。

小説同人誌のPDFをすぐ作りたいなら

すでに本文を書き終えていて、細かな設定より「入稿できるPDFを手早く作りたい」のであれば、ブラウザ上で組版できるツールが簡単です。

Inkyでは、小説本文を貼り付けて縦書き・横書きのPDFを作成できる「小説同人誌PDFメーカー」を無料公開しています。

対応している主な機能は、

  • A6(文庫)・B6・A5
  • 縦書き・横書き
  • 1段組・2段組
  • 文字サイズ・行間・余白
  • ルビ
  • 圏点
  • 縦中横
  • 章扉
  • 自動目次
  • ノンブル
  • 奥付
  • 塗り足し
  • 偶数ページへの調整
  • 入稿前チェック

など。

専用ソフトをインストールせず、本文を貼り付けて設定し、プレビューを確認してPDFとして保存できます。

細かな組版作業そのものを楽しみたい人より、原稿は完成しているので、本として読める形へ早く整えたい人に向いています。

Word・Nola・縦式・無料ツール、どれを選ぶ?

先に大まかな違いを整理すると、次のようになります。

作り方向いている人特徴
Inky 小説PDFメーカー手早くPDFを作りたいブラウザだけで組版からPDF作成まで進めやすい
NolaNolaで執筆している執筆環境からそのままPDF出力へ進める
縦式iPhone・iPad中心で作りたい縦書き原稿の作成とPDF出力に強い
Word自分で細かく調整したい自由度が高く、利用者・解説記事も多い
InDesign本格的に組版したい文字組みやページ設計を細部まで制御できる

どれかひとつがすべての人に最適というわけではありません。

初めて小説同人誌を作るなら、必要な自由度に対して操作が複雑すぎないものを選ぶのがおすすめです。

1. Inky 小説同人誌PDFメーカー|文章を貼ってすぐ作りたい

「文章はもう完成している。あとは本にしたい」という場合に向いているのが、ブラウザ型の組版ツールです。

Inkyの小説同人誌PDFメーカーでは、文章を入力・貼り付けたあと、判型や文字サイズ、余白などを設定して紙面を確認できます。

最大の違いは、執筆ソフトではなくPDFを作ることを目的にしている点です。Nolaのようなプロット管理や執筆支援はありません。

その代わり、

  1. 本文を用意する
  2. 貼り付ける
  3. 組版を設定する
  4. プレビューする
  5. PDFを保存する

という工程に絞っています。

普段はGoogleドキュメントやメモ帳、スマートフォンのエディタなどで小説を書いていても、完成した本文を移せます。

「PDFを作るためだけにWordのページ設定を覚えたくない」という人にも選択肢になります。

Inkyが向いている人

  • 初めて小説同人誌を作る
  • 本文はすでに完成している
  • Wordを持っていない
  • ソフトをインストールしたくない
  • A6文庫・B6・A5で作りたい
  • 縦書きPDFを簡単に作りたい
  • ルビや章扉、目次、ノンブルも入れたい
  • PDFを作りながらページ数を確認したい

反対に、文字単位で高度な組版を作り込んだり、複雑な誌面デザインを組んだりする用途ならInDesignなどの方が適しています。


2. Nola|執筆からPDFまでひとつの環境で進めたい

Nolaは、小説を書くこと自体を支援するサービスです。

プロットや登場人物などを管理しながら本文を書き、その作品をPDFとして出力できます。

2026年には同人誌向けPDF出力の利用も広がっており、緑陽社は9月にNola専用の原稿作成マニュアルを公開。NolaのPDF出力機能から同人誌本文用PDFを作成できると案内しています。

また、ねこのしっぽもNolaから同人誌用データを出力する手順を案内しています。

Nolaが向いている人

  • すでにNolaで小説を書いている
  • プロットや登場人物もまとめて管理したい
  • 執筆からPDF作成まで環境を移したくない
  • PCとスマートフォンなど複数端末で執筆したい

「小説を書くところから始める」なら有力な候補です。

一方、本文がすでに別の環境で完成していてPDF化だけが目的なら、PDF作成に特化したツールの方が工程を減らせる場合があります。


3. 縦式|iPhone・iPadで縦書き小説本を作りたい

縦式は、縦書きに対応したテキストエディタです。

iPhoneやiPadなどで文章を書き、PDFとして出力できます。印刷会社の栄光も縦式から同人誌を作るための設定例を公開しており、PDF、用紙サイズ、塗り足し、フォントサイズ、内側余白などの設定を案内しています。

ねこのしっぽでも縦式による本文データ作成が案内されています。

縦式が向いている人

  • iPhoneやiPadで作業したい
  • 縦書きの状態を見ながら書きたい
  • PCを使わず小説本を作りたい
  • Nolaなどで書いた文章を縦書きへ流し込みたい

Nolaで執筆して、完成した文章を縦式へ移してPDF化する使い方もあります。個人制作の実例でも、この組み合わせが使われています。


4. Word|細かな設定を自分で調整したい

Microsoft Wordも、小説同人誌では定番の選択肢です。

文字方向、余白、段組、ヘッダー・フッター、ページ番号などを設定でき、完成後はPDFへ書き出せます。

DメイトではWordによる小説同人誌の作成手順を公開しており、縦書き、段落、ノンブル、余白などの設定を案内しています。

緑陽社もWordからPDF原稿を書き出す手順と、フォントの埋め込みやPDF出力後の確認項目を公開しています。

Wordが向いている人

  • Wordをすでに使っている
  • 自分で紙面を調整したい
  • ヘッダーやページ番号を細かく設定したい
  • テンプレートを使いたい
  • PDF化する前の文書ファイルも手元に残したい

自由度がある反面、初めての場合はページサイズ、余白、段組、ノンブルなどを自分で設定する必要があります。

「小説を書くためにWordを使いたい」のか、「PDFを作るためだけにWordを使おうとしている」のかで判断すると選びやすくなります。


5. InDesign|文字組みまで作り込みたい

Adobe InDesignは、本や雑誌などページ数のある印刷物を制作するためのレイアウトソフトです。

小説同人誌でも使用できます。

文字組み、マスターページ、柱、ノンブル、スタイル、段組などを細かく管理できるため、本文デザインまでこだわりたい場合には強力です。

ただし、小説本文をPDFにするだけなら機能が多すぎる場合があります。

InDesignが向いている人

  • 商業書籍に近いレベルまで文字組みを調整したい
  • 本文デザインにもこだわりたい
  • 複数冊を継続的に制作する
  • すでにInDesignを使える
  • デザイナーとして組版そのものを作り込みたい

「初めて一冊だけ小説同人誌を作りたい」という人が、PDF作成のためだけに覚える必要はありません。


初心者ならどれを選べばいい?

迷ったら、今どこまで原稿ができているかで選ぶと簡単です。

まだ小説を書いている途中

Nolaなどの執筆環境を使うのが便利です。
ストーリーや登場人物を管理しながら書き、完成後のPDF作成まで考えられます。

本文は完成している

InkyのようなPDF作成ツールへ本文を貼り付けて組版するのが簡単です。
新しくWordなどの操作を覚えなくても、PDF作成へ進めます。

スマホ・iPad中心で作りたい

縦式が候補になります。
とくに縦書きの状態を見ながら作業したい場合に使いやすいでしょう。

レイアウトを自分で調整したい

Wordが候補です。
テンプレートや印刷会社の解説も多いため、調べながら作れます。

本文デザインまで徹底的にこだわりたい

InDesignが向いています。


小説同人誌のPDFを作る前に決めること

ツールを選んでも、いきなり本文を流し込む必要はありません。

先に決めたいのは、

  • 本のサイズ
  • 縦書き・横書き
  • 1段組・2段組
  • 文字サイズ
  • 行間
  • 上下左右の余白
  • ノド側の余白
  • フォント
  • ノンブルの位置
  • 柱を入れるか
  • 章扉を作るか

などです。

「ノド」は、本を綴じる側の内側部分です。厚い本ほど中央付近が開きにくくなるため、文字がノドへ寄りすぎないよう余白を取ります。

ただし、最初からすべての数値を完璧に決める必要はありません。

まず標準的な設定で数ページ作り、画面上のプレビューや試し刷りを見ながら調整する方がわかりやすいでしょう。


A6・B6・A5、どのサイズで作る?

小説同人誌でよく使われるサイズには、A6、B6、A5などがあります。

A6(文庫)

一般的な文庫本に近いサイズです。
持ちやすく、小説らしい仕上がりにしやすいため、文章中心の同人誌と相性があります。

B6

A6よりひと回り大きく、文章をゆったり配置できます。
文庫サイズでは文字が詰まって見える場合や、読みやすさを重視したい場合にも候補になります。

A5

同人誌ではよく使われるサイズです。

小説では1段組だけでなく2段組にもでき、文章量が多い本にも使えます。

サイズによって同じ文章でもページ数は変わります。
ページ数が変われば、印刷料金だけでなく本の厚みや表紙データの横幅にも影響します。

そのため、印刷所を決める前に一度PDFを作って、おおよそのページ数を出しておくと見積もりがしやすくなります。


PDFにする前にノンブルを確認する

同人誌の入稿で忘れやすいのがノンブルです。

ノンブルとはページ番号のこと。読者がページを確認するためだけでなく、印刷・製本工程でページ順を確認するためにも使われます。

印刷会社によって入稿条件は異なりますが、ノンブルを必須としている会社もあります。

そのため、「画面上では綺麗に見えるから完成」ではなく、利用する印刷会社の原稿作成マニュアルを確認してからPDFを確定するのが安全です。


PDFを作ったら入稿前に必ず確認する

PDFが書き出せても、まだ完成ではありません。

少なくとも次の項目は確認しておきましょう。

  • 仕上がりサイズが注文する本と一致している
  • ページ順が正しい
  • ページ数が想定どおり
  • ノンブルが正しく入っている
  • 文字がノドへ寄りすぎていない
  • 文字が仕上がり位置へ近すぎない
  • ルビが崩れていない
  • 縦中横が意図どおり表示されている
  • 章扉の前後に不要な空白ページがない
  • フォントが意図した状態で表示されている
  • 奥付に必要な情報が入っている

PDF変換によって文字や画像が変化することもあります。

緑陽社もWordからPDFを書き出した後に、原稿サイズ、フォントの埋め込み、文字のズレ、画像の抜けなどを確認するよう案内しています。

ツール上の原稿だけでなく、最終的に入稿するPDFそのものを開いて確認するのが重要です。


印刷所の入稿仕様は最後に必ず確認する

「PDF入稿対応」と書かれていても、すべての印刷会社がまったく同じ仕様ではありません。

塗り足し、ノンブル、カラーモード、ファイルのまとめ方、表紙と本文の分け方などが異なる場合があります。

たとえば縦式についても、栄光は塗り足しや内側余白など具体的な推奨設定を案内しています。

PDFメーカーやWordなどでデータを作るときも、最終的には入稿先の最新マニュアルを優先してください。

「PDFとして開ける」と「その印刷所へ問題なく入稿できる」は別です。


迷ったら、まずPDFを一度作ってみる

初めて小説同人誌を作ると、文字サイズ、行間、余白、ページ数など、決めることが多く見えます。

しかし、最初から正解を数値だけで探すより、自分の文章を一度本の形にしてみる方が早くわかります。

A6にしてみる。文字を少し大きくする。余白を広げる。ページ数を見る。

その結果を確認しながら調整すれば、「自分が作りたい本」が少しずつ具体的になります。

Inkyの小説同人誌PDFメーカーは、その試行錯誤をブラウザ上でできるようにしています。

文章を貼り付けるだけで始められます。

PDFが完成してページ数が決まったら、そのページ数と印刷所の本文用紙から背幅を計算し、表紙データを作る工程へ進みます。

「文章を書く」から「印刷できる本にする」までを一気に考えようとすると難しく感じます。

本文を書く → PDFを作る → ページ数を確定する → 表紙を作る → 入稿すると分ければ、初めてでも順番に進められます。


よくある質問

小説同人誌はPDFで入稿できますか?

多くの同人誌印刷会社がPDF入稿に対応しています。ただし対応形式や原稿仕様は印刷会社によって異なるため、注文先の最新マニュアルを確認してください。

Wordがなくても小説同人誌は作れますか?

作れます。Nolaや縦式、ブラウザ上のPDF作成ツールなど、Wordを使わずにPDFを作成する選択肢があります。印刷会社自身もNolaや縦式からの入稿手順を案内しています。

スマホだけでも作れますか?

可能です。縦式などスマートフォン・タブレットでPDFを書き出せるアプリがあります。ねこのしっぽもスマートフォンを使った小説同人誌制作を案内しています。

PDFを作ればどの印刷所にもそのまま入稿できますか?

必ずしもそうではありません。印刷所によって原稿サイズ、塗り足し、ノンブルなどの条件が異なります。利用する印刷会社の入稿仕様を優先してください。

A6・B6・A5ならどれがおすすめですか?

一般的な文庫本の雰囲気にしたいならA6、少し大きく読みやすくしたいならB6、2段組や文章量の多い本ならA5も候補です。ただし、最適なサイズは文章量や目指すデザインによって変わります。