同人誌を作るとき、「本文は完成したけれど表紙が決まらない」「イラストはあるのに、タイトルを載せたら急にまとまらなくなった」ということがあります。

同人誌のデザインで考えなければならないのは、絵をきれいに見せたり、文字をおしゃれに配置したりすることだけではありません。
表紙、背表紙、裏表紙、本文、奥付、紙、印刷加工まで含めて、作品を一冊の本としてどう見せるかを整える作業です。

とはいえ、すべてに凝る必要もありません。

  • 表紙だけしっかり作り、本文はシンプルにする
  • 特殊加工を使わず、配色と文字だけで仕上げる
  • 表紙をシンプルにし、本文を全力で仕上げる

それでも十分に本らしくなります。
まずは、どこをデザインすればいいのか整理するところから始めましょう。

同人誌でデザインする主な場所

同人誌には、表紙以外にもデザインできる場所があります。

場所主な内容
表1表紙。タイトルやメインビジュアルを配置
背表紙タイトル・作者名など
表4裏表紙。装飾やサークル情報など
本文が始まる前のタイトルページ
目次作品名・ページ番号
本文文字組み、余白、ノンブル
奥付発行日、発行者、連絡先、印刷所など
カバーカバー付きの場合の外装
カバー下カバーを外した本体表紙

表紙も本文も作り込まないといけない……なんてことはありません。
例えば「表紙は情報量を多くして、本文や奥付をシンプルにする」など、一冊の中で強弱をつけるのもメリハリが付いて良いですよ!

最初に作品の「見せたい雰囲気」を決める

デザインを考え始める前に、まずは「作品の雰囲気」を確認しましょう。
たとえば同じ恋愛作品でも、「とにかく明るいラブコメ」と「大人向けのしっとりした恋愛」では雰囲気が全く違います。

「かわいい表紙にする」だけだとざっくりしすぎるので、

  • かわいい+ポップ
  • かわいい+上品
  • かわいい+レトロ
  • かわいい+少し不穏

くらいまで絞れると、色やフォントも選びやすくなります。

デザインに迷ったときは、「なにを配置するか」より先に「どんな雰囲気に見せたいか」を決めましょう。

同人誌の表紙デザインは3つの要素から考える

表紙を作るときは、ひとまず次の3つに分けると整理できます。

1. メインビジュアル

イラスト、写真、図形、モチーフなどです。

「ビジュアル」と聞くとイラストを想像するかもしれませんが、必ずしもイラストが必要なわけではありません。
文字だけの表紙や、写真とタイトルだけの表紙もアリです。

2. タイトル

作品名です。
表紙の中でも重要度が高いため、配置・大きさ・フォントを慎重に決めます。

3. 装飾

線、図形、テクスチャなどです。
装飾はデザインを華やかにできますが、増やしすぎると逆にまとまりにくくなります。

まずはメインビジュアルとタイトルだけを置き、その後で必要な分だけ足す方が失敗しにくいです。

タイトルは「中央」だけでなくいろいろな場所へ置ける

タイトルは一番わかりやすい位置に置くのが無難です。

一番わかりやすい位置と言っても、中央とは限りません。

  • 左端へ寄せる
  • 右上へ置く
  • 縦書きにする
  • イラストへ重ねる
  • 人物の後ろへ回す

など、様々な配置があります。

大切なのは、変わった位置へ置くことではなく、素材や余白との関係を見ることです。

デザインに慣れてきたら奇抜・大胆な配置に挑戦するのもアリですが、初心者ならまずは「一番余白が広いところ」に配置すると失敗がありません。

フォントは作品の雰囲気と読みやすさで選ぶ

フォントは表紙の印象を大きく変えます。

フォント印象の例
明朝体文学的、静か、上品、繊細
ゴシック体現代的、力強い、読みやすい
丸ゴシック柔らかい、親しみやすい
手書き系日常感、感情、ラフさ
デザイン書体個性を強く出しやすい

「恋愛だから明朝体」「ギャグだからポップ体」のような決まりはありません。

同じ明朝体でも、細いものと太いものでは全く印象が違います。

フォントそのものだけでなく、大きさ、太さ、字間、行間、縦書きか横書きかまで含めて調整します。

配色は使う色の役割を整理する

色数が増えると、表紙は簡単に散らかります。だからといって、必ず2〜3色に絞る必要はありません。
見るべきなのは色の数より、どの色を中心にするかです。

この作品を見た人に、最初にどんな印象を持ってほしいか から逆算して配色を考えましょう。

デザインの中で最も印象強い色が、本のイメージカラーになります

イラストがある場合は、イラスト内の服・瞳・小物などから色を拾ってタイトルへ使う方法もおすすめです。

表紙イラストは「デザインできる余地」があると使いやすい

表紙用のイラストを用意する場合、完成した一枚絵として美しいことに加えて、デザイン側で調整できる余地があるとレイアウトの幅が広がります。

たとえば、

  • 人物と背景を分けておく
  • 人物の周囲まで少し広めに描く
  • 髪や服をキャンバス端で切らない
  • 花やエフェクトを別レイヤーにする

といった状態です。

人物を少し右へ寄せて左へタイトルを置いたり、文字を人物の後ろへ通したりできるためです。

もちろん、すでに完成した一枚絵しかなくても表紙は作れます。
「レイヤー分けされていないと依頼できない」という意味ではありません。

余白は「何もない場所」ではなくデザインの一部

初心者のデザインでよく起こるのが、空いている場所を全部埋めてしまうことです。

  • タイトルを置いた
  • その横が空いたから花を置く
  • 下も空いたから英語を入れる
  • 角も寂しいから線を入れる

これを続けると、どこを見ればいいのかわからなくなります。

余白は、タイトルやイラストを目立たせるために必要です。何も置いていない場所があるからこそ、置いたものが目立ちます。

「何もない」のではなく「余白がある」と考えましょう

「ここが空いているから何か置こう」ではなく、本当に必要かを一度考えてみてください。

表1だけでなく、背表紙・表4までセットで考える

紙の同人誌では、表紙は表1だけではありません。
通常は「表4+背表紙+表1」を一枚のデータとして作ります。

表1だけ完成させてから無理に横へ広げると、裏表紙が余り物のようになりやすいです。

最初から見開き全体を見て、

  • 表1を主役にする
  • 表4は静かにする
  • 背表紙だけアクセントカラーを入れる

など、一枚のデザインとして考えるとまとまります。

背幅は本文のページ数や用紙によって変わるので、利用する印刷所のテンプレートを確認してください。

印刷を考えるなら「塗り足し」も必要

紙へ印刷する場合、仕上がりサイズぴったりでデータを作るわけではありません。
裁断時のずれに備えて周囲へ数mmの「塗り足し」を設けます。

たとえばA5本でも、表紙データそのものが単純に148×210mmになるわけではありません

さらに背表紙も加わるため、本ごとに横幅が変わります。

表紙制作を始める前に、

  1. 印刷所
  2. 本文用紙
  3. ページ数
  4. 背幅
  5. テンプレート

まで確認しておくと後で作り直さずに済みます。

特殊装丁はデザインと一緒に考える

箔押し、特殊紙、白印刷、トレーシングペーパー、カバーなどを使う場合は、完成後に追加するのではなく、最初からデザインへ組み込みます。

もちろん後からでも加工はできますが、強く活かすことはできません

たとえば箔押しなら、「完成した表紙の空いている場所へ箔を足す」より、箔そのものを一つの色として考える方がまとまりやすくなります。

「白・黒・赤の3色に、箔押し(金)」ではなく、「白・黒・赤・金(箔押し)の4色」というイメージでデザインした方が色数を考えやすいです。

金箔を使う色がごちゃごちゃしないように色数を抑える
ホログラム箔を使う箔部分が見やすいように周囲を余白にする

など、加工が強いほど、通常印刷部分は引き算した方が映えます。

本文デザインは読みやすさを優先する

小説本の主役は文章です。漫画ならコマとセリフです。
本文では、表紙ほど派手なデザインは必要ありません。

むしろ派手なデザインを作り込むと、装飾と本文の境目がわかりにくくなってしまうこともあります。
本文デザインのコツは「おしゃれに飾る」ではなく「見やすく整える」を意識することです。

特に小説本文では、文字サイズ、行間、1行の文字数、上下左右の余白、ノンブルなど、読みやすさに直接関わる部分を整えます。

「長時間読んでも疲れないか」を優先しましょう

奥付も一冊のデザインに合わせる

奥付は必要事項を並べるだけでも構いませんが、一冊の中では最後に見るページでもあります。

  • 本文と同じフォントを使う。
  • 表紙のアクセントカラーを少し使う。
  • 小さなモチーフを入れる。

などの工夫をすると、一冊の本としての統一感が出ます。

奥付に必要な項目や二次創作向けの注意書きについては、別記事で詳しくまとめています。

自分でデザインするか、デザイナーへ依頼するか

同人誌の表紙は自分でも作れます。が、その一方で、すべてを自分でやる必要もありません。

自作が向いている場合依頼が向いている場合
デザイン作業自体を楽しみたい本文制作へ時間を使いたい
費用を抑えたい客観的なデザインが欲しい
シンプルな表紙でよいイラストを活かしてほしい
ソフト操作に慣れている印刷データまで任せたい
自分で試行錯誤したい特殊装丁も相談したい

どちらが良いかというものではありません。
「デザインまで含めて本作りを楽しみたい」なら自作が向いています。

反対に、本文や漫画の完成に集中したいなら、表紙だけ外注する方法もあります。

デザイナーへ依頼するときに用意するとスムーズなもの

依頼する場合は、完成したデザイン案まで作る必要はありません。

  • あらすじ
  • 登場人物
  • 作品の雰囲気
  • 好きな色・避けたい色
  • 使用したいイラスト
  • 本のサイズ
  • 印刷所
  • 希望する特殊加工

などを伝えた方が役立ちます。

「おしゃれにしてください」だけでも依頼はできますが、作品の方向がわかる資料があるほどデザインの判断材料が増えます。

参考画像を送る場合も、「このデザインをそのまま真似してほしい」ではなく、

  • ここにある余白感が好き
  • 文字が大きいところが好き
  • この色の暗さが好き

のように、どこが好きなのか伝えると認識を合わせやすくなります。

同人誌デザインを外注する場合の料金

料金はデザイナーによって大きく異なります。
表紙だけなのか、カバー・帯・本文・お品書きまで含むのかによっても変わります。

依頼先を比較するときは、金額だけでなく、

  • ラフ案の数
  • 修正回数
  • 納品形式
  • 背表紙・表4を含むか
  • 特殊加工データを作ってもらえるか
  • 商用・同人利用条件
  • 制作事例公開の扱い

まで確認してください。

Inky Designでは現在、同人誌表紙デザインを12,000円から受け付けています。料金と対応範囲は料金ページにまとめています。

デザイナーは作風だけで選ばない

制作事例を見ることは大切ですが、それだけで決める必要はありません。

  • イラストなし表紙にも対応しているか
  • 希望するテイストの実績があるか
  • 特殊装丁に対応できるか
  • 料金が明示されているか
  • 修正ルールがわかりやすいか
  • 納期が自分の入稿日に間に合うか

なども確認します。

特に「かわいい作風が得意」と書かれていても、かわいいにもかなり幅があります。
制作事例を何点か見て、「自分の本がここに並んでも違和感がなさそうか」で判断するとわかりやすいです。

同人誌デザインで迷ったときのチェックリスト

完成前に、次を確認してみてください。

  • タイトルは縮小しても読めるか
  • 一番見せたいものがわかるか
  • 色を増やしすぎていないか
  • フォントを使いすぎていないか
  • イラストの顔を文字で隠していないか
  • 余白を全部埋めていないか
  • 表4・背表紙まで確認したか
  • 塗り足しがあるか
  • 印刷所のテンプレートを使っているか
  • 背幅が最新のページ数に合っているか
  • RGB・CMYKなど入稿条件を確認したか
  • 奥付に必要事項が入っているか

同人誌のデザインに正解はない

デザインの基本を調べると、「色は3色まで」「タイトルはこの位置」「余白はこれくらい」「このフォントならおしゃれ」といったルールがたくさん出てきます。
どれも基本的な判断材料にはなりますが、作品によっては破った方が面白くなります。

ホラーなら読みにくさを演出に使うこともありますし、ポップな本なら色を大量に使うこともあります。
タイトルを極端に小さくするのだっておしゃれです。

セオリーは、守るためではなく、なぜそう見えるのかを理解するために使うものです。
最初は基本通りに組んでみて、作品に合わなければ崩してしまいましょう。

表紙、本文、紙、加工まで含めて「この作品ならこの形が似合う」と思える一冊を作ってみてください。