こんにちは、Inky Designです。
同人界隈でよく耳にする「アンソロジー」「合同本」「ゲスト本」。
どれも「複数の作家が1冊の本に参加する」ものですが、作り方や参加者の立場には若干の違いがあります。
厳密なルールがあるわけではありません。
「参加人数が○人ならアンソロジー」「費用を折半したら必ず合同誌」と機械的に決まるものではなく、人によって、あるいはジャンルや企画によって呼び方が異なります。
まずは、おおまかな違いを整理してみましょう。
| アンソロジー | 合同誌 | ゲスト本 | |
|---|---|---|---|
| 本の主体 | 主催者 | 参加者全員 | 個人誌の発行者 |
| 参加方法 | 招待・公募など | 仲間同士で企画 | 発行者から依頼 |
| 費用 | 主催者が負担 | 参加者で分担 | 発行者が負担 |
| 売上 | 主催者が管理 | 参加者で取り決め | 発行者が管理 |
| イメージ | ひとつの企画へ複数人が寄稿 | 複数人で一緒に作る | 個人誌にゲストが参加 |
アンソロジーとは
アンソロジーってどんな本?
アンソロジーは、ひとつのテーマやカップリング、キャラクター、シチュエーションなどを決め、その企画に複数の作家が作品を寄稿して作る本です。
「○○×△△アンソロジー」「○○誕生日記念アンソロジー」のような形を想像すると分かりやすいでしょう。
主催者が企画をまとめる
アンソロジーでは、基本的に企画を立ち上げた主催者が本全体を取りまとめます。
たとえば、
- 企画内容を決める
- 執筆者を募集・招待する
- 締切を設定する
- 原稿を集める
- 印刷所を決める
- 表紙や本文を編集する
- 頒布価格を決める
- イベントや通販で頒布する
といった役割です。
参加者は「本を共同で発行する人」というより、主催者の企画へ作品を寄稿する人という位置づけになることが多いです。
参加者は招待でも公募でもOK
アンソロジーというと、主催者から声をかけられた作家だけが参加するイメージもありますが、
- 主催者から個別に依頼する
- SNSなどで参加者を公募する
- 招待と公募を組み合わせる
など、さまざまな形があります。
そのため、「公募だからアンソロジー」「招待制だから合同誌」という区別ではありません。
費用や売上は主催者が管理することが多い
アンソロジーでは、印刷費などを主催者が負担し、頒布による売上も主催者が管理する形がよく見られます。
ただし、これも絶対的な決まりではありません。
参加者から参加費を集める企画などもあり得るため、参加する側は費用負担・謝礼・献本・頒布後の取り扱いなどを募集要項で確認しておくと安心です。
合同誌とは
合同誌ってどんな本?
合同誌は、その名前のとおり複数人が一緒に作る同人誌です。「合同本」と呼ばれることもあります。
友人同士や普段から交流のある作家同士で、「このテーマで本を作ろう」「次のイベントで2人誌を出そう」と企画が始まるケースが多いです。
全員が「本の制作側」になるイメージ
アンソロジーとの違いを考えるときに分かりやすいのが、参加者の立場です。
アンソロジーでは、主催者 → 参加者へ寄稿を依頼 という関係になりやすいのに対して、合同誌では、参加者全員で1冊を作るという関係になりやすくなります。
たとえば2人合同誌なら、
- Aさんが表紙を担当
- Bさんが入稿作業を担当
- 印刷費は半分ずつ
- 完成した本も半分ずつ受け取る
といった進め方もできます。
もちろん、作業量まで完全に均等にする必要はありません。
デザインが得意な人が表紙を作り、入稿に慣れている人が印刷所とのやり取りをするなど、得意分野で分担する方法もあります。
費用や売上は事前に決めておく
合同誌では「費用折半・売上も等分」とされることが多いですが、これも必須ルールではありません。
たとえば、
- 印刷費を均等に負担する
- ページ数に応じて負担額を変える
- 代表者が一度立て替える
- 完成本を分配して、それぞれが自分の分を頒布する
- 売上から制作費を引いた残額を分配する
など、いろいろな方法があります。
大切なのは「合同誌だからこうする」ではなく、参加者同士で最初にルールを決めておくことです。費用が発生する企画ほど、曖昧なまま始めない方が後々のトラブルを防ぎやすくなります。
ゲスト本とは
ゲスト本ってどんな本?
ゲスト本は、個人誌をベースに、ほかの作家にも作品を寄稿してもらった本です。
アンソロジーや合同誌との大きな違いは、本そのものの主体が個人にあることです。
たとえばAさんが出す50ページの個人誌に、
- Bさんが漫画を4ページ寄稿
- Cさんがイラストを1ページ寄稿
している場合などが分かりやすい例です。
本としてはあくまでAさんの個人誌で、BさんやCさんが「ゲスト」として参加します。
ゲストは発行者が依頼することが多い
ゲスト参加では、本を発行する人から、「新刊に1枚イラストを描いてもらえませんか?」「数ページ寄稿してもらえませんか?」と依頼する形が一般的です。
親しい友人へお願いすることもあれば、好きな作家へ正式に依頼することもあります。
謝礼の形もさまざま
ゲストには「献本+御礼品+打ち上げ代」などを支払うケースが多いですが、謝礼の形も一律ではありません。たとえば、原稿料、菓子折り、相手の本へも寄稿するなど、関係性や企画によって変わります。
特に友人同士であっても、依頼するときには締切・ページ数・内容・謝礼の有無を最初に伝えておくとスムーズです。
アンソロジーと合同誌は何が一番違う?
この2つは特に区別が分かりにくい言葉です。
人数やテーマだけを見ると、ほとんど同じように見える場合もあります。
判断するときは、「その本の発行主体は誰か」で考えると分かりやすくなります。
| アンソロジー | 合同誌 |
|---|---|
| 主催者が本を企画・発行し、参加者が寄稿する | 複数人が共同で本を企画・発行する |
費用や売上についても、アンソロジーでは主催者、合同誌では参加者全員が関わる傾向があります。一般的な説明でも、この「主催者主体か、共同制作か」が区別として使われています。
ただ、実際の現場(現場…?)では、ルールに則って呼び方を統一しているわけではありません。実質的にはアンソロジーに近い企画を「合同誌」と呼ぶ人もいます。
そのため、名前だけで内容を判断せず、募集要項や企画概要を確認することの方が重要です。
参加人数で決まるわけではない
2人でアンソロジーを作ることもできますし、多人数の合同誌も作れます。人数による明確な境界はありません。
「参加人数」よりも、
- 誰が企画したか
- 誰が本の責任を持つか
- 誰が制作費を負担するか
- 誰が頒布するか
- 参加者が寄稿者なのか共同発行者なのか
を見る方が違いを理解しやすくなります。
複数人で本を作る前に決めておきたいこと
アンソロジーや合同誌は、個人誌より関わる人数が増えます。その分、制作を始める前に決めておきたいことも増えます。
原稿の締切
最終的な入稿日だけでなく、主催者や編集担当者が原稿を確認する時間も必要です。
参加者へ案内する締切は、印刷所の締切より余裕を持って設定します。
原稿の仕様
少なくとも、下記については統一して案内しておくと、原稿回収後の作業が楽になります。
- 原稿サイズ
- 解像度
- カラーモード
- ファイル形式
- ページ数
- ファイル名
漫画と小説が混在する場合は、それぞれの提出方法を分けてもいいでしょう。
費用・売上
合同誌なら特に重要です。
誰が何円負担するのか、完成本をどう分けるのか、売上をどう扱うのかを事前に決めます。
献本や謝礼
生々しい話ではありますが、アンソロジーやゲスト本では、一番最初に決めておくと安心です。
- 完成本を何冊渡すか
- 送料は誰が負担するか
- 原稿料などの謝礼があるか
再録について
寄稿した作品を、あとから参加者自身の個人誌やWebへ掲載したい場合もあります。
「発行から○か月後なら再録OK」など、必要なら事前にルールを決めておきます。
デザインするときは「1冊としての統一感」も大切
複数人の作品をまとめた本では、漫画・小説・イラストなど作風の異なる原稿が集まります。
そのため、表紙、目次、扉、奥付など、本全体のテイストを整えると、1冊としてまとまりやすくなります。
特にアンソロジーでは、表紙だけを見ると「誰の本なのか」「どんなテーマの本なのか」が分かりにくくなることがあります。
参加者全員の作風を無理に表紙へ詰め込むより、企画そのもののテーマを表紙デザインの軸にする方法もあります。
アンソロジー・合同誌・ゲスト本に絶対的な定義はない
最後にもう一度整理すると、
- アンソロジー:主催者の企画へ複数人が寄稿する本
- 合同誌:複数人が共同で企画・発行する本
- ゲスト本:個人誌へほかの作家がゲストとして寄稿する本
という違いで考えると分かりやすいです。
ただし、実際の同人活動では呼び方が混在しています。
「アンソロジーと名乗ったから費用は絶対に主催負担」「合同誌だから利益は必ず均等」といったルールが決まっているわけではありません。
名称そのものよりも、誰が主催し、誰がどこまで担当する企画なのかを参加者同士で共有しておくことが大切です。
複数人で作る本は、個人誌にはない楽しさがあります。
その一方で、原稿回収・編集・デザイン・入稿など作業も増えるため、早めに役割を整理しておくと制作を進めやすくなります。